令和8年度 情報工学科 卒業研究中間発表 概要集

講演番号 名前 所属研究室 発表タイトル
01 [芥川 光月] 内田研究室 [心拍数を用いた高校野球におけるメンタル状態とパフォーマンスの分析]
03 稲守 剣人 市川研究室 ECレビューにおける主観的評価情報の構造化に関する研究
04 井本 蒼士郎 内田研究室 議論支援システムAIR-VASによる多様な視点提示が合意形成過程に与える影響
05 内田 匠海 山口智研究室 人間の介入度合いから考えるAIと人との協働の検討
06 ウヌルー 市川研究室 行動規範の混在が交通施策の効果に及ぼす影響の分析
07 宇野 志保 山口賢研究室 テストポイント挿入を用いた テスト容易なMUTEXの設計
08 梅﨑 千紘 松尾研究室 手書き文字認識における曖昧さの判定
09 浦久保 拓人 岡村研究室 SLMで動作するWebアプリケーション⽤ペンテスターの開発
10 大園 悠揮 松村研究室 聴覚の左右差を緩和するアプリケーションの開発
11 小原 迅人 岡村研究室 背景型敵対的攻撃に対する防御手法の検討
12 日下 優人 岡村研究室 SNS投稿における個人特定リスクの定量的評価と可視化手法の提案
13 小原 浩太 山口賢研究室 軽音楽部の音漏れ可視化と騒音低減手法の提案
14 佐佐木 翔星 上野研究室 プログラム理解の識別における脳波の多次元DTW
15 佐藤 清正 松尾研究室 画像テクスチャ特徴量を用いたホットミクスの最適な攪拌停止タイミングの推定
16 新谷 華穏 岩田研究室 74LSシリーズIC向け電源ピン位置可変TTL ICテスタの提案
17 砂川 伸紀 松村研究室 基本周波数変動幅の操作による関西弁イントネーションの知覚境界の分析
18 髙岡 更沙 山口賢研究室 高糖度ミニトマト向け灌水制御システム-データ収集ハードウェアの開発-
19 嶽野 雄一 岡村研究室 完全準同型暗号を用いた連合グラフ上のプライベート閉路存在証明
20 竹村 俊哉 内田研究室 経穴刺激によるVR酔いの抑制
21 田中 朝陽 岩田研究室 赤外線焦電センサを用いた害獣検出及び行動検知-無線通信手法の構築-
22 田中 温大 山口智研究室 ユーザの未知領域におけるAI生徒法の効果に関する研究
23 塚 暖人 内田研究室 文脈類似度を用いた会話の流れの可視化
24 辻中 日菜 松村研究室 重回帰分析による音声特徴量と概日リズムおよび季節変動との関連解析
25 砺波 拓矢 市川研究室 Continuum Swarm追跡・制御問題の離散的実装と数値的検証
26 中井 修一 山口智研究室 ゲーム実況の解説に基づく生成AI利用時の上達条件の解明
27 中澤 郁仁 岩田研究室 映像での物体検出を用いた食材管理およびレシピ提案システムの構築
28 中谷 唯人 上野研究室 プログラミングにおける苦手意識とゲーミフィケーションの報酬設計との関係
29 中西 結樹 松尾研究室 AIを用いたホイップの攪拌停止タイミングの推定
30 中野 劉建 山口賢研究室 RISC-Vベースのautoencoder向けISA拡張とその評価
31 永濱 生桐 岩田研究室 Wi-Fi Halowを用いた校内通信ネットワーク
32 中村 奏月 松尾研究室 構造解析法による重畳採点記号の認識 —ストローク芯線上の正確な連結点検出手法の提案―
33 西陰地 厚志 松村研究室 非リズムゲームにおけるBGMとゲーム内要素の連動がプレイ体験に与える影響
34 坂東 恵佑 上野研究室 コード修正履歴の入力情報設計がLLMによるプログラミング学習者向けフィードバック生成に与える影響の分析
35 福田 悠人 松村研究室 ゲーム音響がプレイヤーと視聴者の体験に与える影響
36 前田 貴亮 山口智研究室 AIの使い方における思考のコストと記憶の定着に関する研究
37 増井 崇 上野研究室 プログラム理解におけるタスクごとの脳波賦活パターンと対応する脳機能の検出
38 増本 稜大 市川研究室 目標水準の異質性と利他性を考慮した強化学習型公共財ゲームモデルの提案と評価
39 三好 哲聖 上野研究室 マウスの操作ログからユーザビリティ関連感情を分析する手法の精度向上
40 森岡 珀人 内田研究室 AST差分情報に基づくプログラム作成問題の難易度評価手法
41 森岡 大和 市川研究室 音楽的リズム構造を応用した歩行体験の面白さの評価
42 山本 凌楓 松尾研究室 誤認識しやすい手書き数字ペアの定量解析と実運用閾値設計
43 𠮷見 武 岡村研究室 Wi-Fiプローブ要求のIE構成識別と匿名化対策の評価
44 和井田 朋香 山口賢研究室 高糖度ミニトマト向け灌水制御システム―植物状態評価アルゴリズムの開発―
45 渡邉 紗也乃 山口智研究室 AI依存からの回復条件とAIの適切な利用方法

市川研究室(コアタイム:10:40-11:40)

講演番号
03
研究タイトル
ECレビューにおける主観的評価情報の構造化に関する研究
名前
稲守 剣人

概要:近年,ECサイトには大量のユーザレビューが蓄積され,商品の購入判断における重要な情報源となっている.レビューには,商品の特徴や利用経験に基づく情報だけでなく,投稿者ごとに異なる着目点や評価基準に基づく主観情報が含まれている.しかし,同じレビューであっても閲覧者によって参考になるかどうかが変わるため,大量のレビューの中から閲覧者にとって有用となる可能性のある情報を発見することは容易ではない.従来のレビュー分析では,評価値や感情極性などを対象とした分析が中心であり,投稿者がどの対象をどの観点から評価したかという評価基準の構造は十分に扱われていない.そこで本研究では,レビュー文章から評価対象・評価観点・極性で構成される評価情報を抽出し,大量のレビューに含まれる多様な評価基準を構造化する手法について検討する.具体的には,大量のゲームレビューを対象として,大規模言語モデル(LLM)を用いて評価情報を抽出する.その情報をもとに,既存の評価基準との差異や,新たに抽出される評価基準の特徴について分析する.さらに,構築した評価基準情報の有用性を検討するため,閲覧者が重視する観点に基づいたレビュー探索や,商品間・投稿者間の関係分析への応用可能性について考察する.

講演番号
06
研究タイトル
行動規範の混在が交通施策の効果に及ぼす影響の分析
名前
ウヌルー

概要:観光客など様々な人が行き交う観光地周辺の道路では,歩行者による乱横断(横断歩道以外での横断や信号を無視した横断)が起こりやすく,危険であるとともに混雑の原因になる.この状況を改善するためには,行動規範が混在する状況に対して効果的な交通施策の策定が求められる.本研究では,歩行者の行動規範の混在が交通施策の効果に及ぼす影響を分析し,行動規範の違いを考慮した施策選定の必要性を明らかにする.そのために,本研究では,乱横断を起こす歩行者をモデル化し,歩車混在状況を再現するシミュレーション環境を構築して分析する.具体的には,信号の待ち時間,移動距離,人混みの不快さから歩行者のストレスを計算し,ストレスが高まるほど乱横断する確率が高まる動きをプログラムで実装する.実験では,横断歩道の配置や信号設置などの交通施策と,歩行者のストレス耐性の分布を変化させ,複数の条件でシミュレーションを行う.シミュレーション上での運転者・歩行者の平均移動時間とストレスの計測結果を通じて,歩行者の行動規範の混在度合いによって最適な交通施策が変化するかを分析する.環境構築には,交通シミュレータSUMOとPythonを用いる.

講演番号
25
研究タイトル
Continuum Swarm追跡・制御問題の離散的実装と数値的検証
名前
砺波 拓矢

概要:Swarmの追跡・制御問題とは,需要と資源の2つの密度分布が与えられたときそれらを,資源密度から需要密度への総コストを最小化する最適制御問題である.特にContinuum Swarmでは,密度分布が連続と仮定することでSwarm個体の流れを流体のように扱う.資源の分布が絶対連続で,需要の分布が時間変化しない場合,最適な輸送の軌道はワッサースタイン測地線に一致し,最小のコストも解析的に求められることが知られている.一方で,実際のSwarmシステムは有限個の離散エージェントから構成されるため,どの程度理論と一致するか,ノイズに対してどの程度頑健かは十分に検証されていない.そこで,本研究では離散エージェント群を連続密度へ近似するようモデル化を行い,それに基づいたContinuum Swarmのシミュレーションを構築し,理論と実装との乖離を定量的に評価する.具体的には,(1)エージェント数の増加にしたがって近似誤差はどのような挙動をするか,(2)ノイズを加えるとコストや追跡性能にどのような影響が生じるかを数値的に検証する.

講演番号
38
研究タイトル
目標水準の異質性と利他性を考慮した強化学習型公共財ゲームモデルの提案と評価
名前
増本 稜大

概要:アクティブラーニング等のグループワークでは,メンバー間で成果に対する目標水準(達成基準)が異なることがあり,同じ成果であっても個人の満足度や不満に差が生じうる.個人の利益と集団便益のトレードオフを扱うモデルとして「公共財ゲーム」が広く用いられている.公共財ゲームを扱った先行研究では,強化学習エージェントを導入することで,条件付き協調の創発やリスク選好等の個人差の影響が分析されている.しかし,目標水準の異質性は進化的モデルで扱われるに留まり,強化学習モデルと組み合わせた検討はほとんどない.そこで本研究では,個人ごとに異なる目標水準と,他者への配慮を考慮した強化学習型公共財ゲームモデルを提案する.提案モデルを用いて,目標水準の異質性が集団内の不満格差を生む条件と,利他性による緩和効果を明らかにする.具体的には,提案モデルでは,エージェントごとに異なる目標水準を設定し,全体の成果と自身の目標水準との差に基づいて満足度を評価する.また,他者の満足度評価を加味した報酬を導入し,各エージェントは努力量ごとの期待効用を学習する.不満は目標未達による負の評価の大きさとして定量化し,目標水準のばらつきと他者配慮の強さを系統的に変化させた際の不満の偏り(分散)の変化をヒートマップとして可視化する.

講演番号
41
研究タイトル
音楽的リズム構造を応用した歩行体験の面白さの評価
名前
森岡 大和

概要:歩行時の風景には面白いものとそうでないものが存在する.従来の景観評価では,景観要素の量や配置などの物理的な特徴に基づく評価が中心であり,歩行中に連続的に変化する景観体験の面白さを説明する手法は確立されていない.予測符号化理論では,人間は感覚入力を予測し,実際の入力との差分である予測誤差に基づいて知覚や感性的反応を形成すると考えられている.また音楽分野では,この予測と逸脱の関係がリズムやメロディの構造に現れ,シンコペーションの強度と快感・興味が逆U字型の関係を示すことが報告されている.本研究では,音楽における予測と逸脱の関係を歩行景観へ応用し,景観変化のタイミングのずれが歩行体験の面白さに与える影響を検証することを目的とする.具体的には,街区を音楽における小節に相当する時間的単位として扱い,歩行に伴って現れる景観オブジェクトの出現タイミングをリズムイベントに対応付けることで,音楽におけるシンコペーションに相当する景観変化のずれをモデル化する.実験では,仮想3D空間内に生成した街路を一人称視点で歩行する動画を用い,街区内に配置する景観オブジェクトの位置を操作することで,景観変化のタイミングのずれが面白さに与える影響を評価する.これにより,予測符号化理論に基づく歩行景観の時間的構造と感性的評価の関係を検討する.

岩田研究室(コアタイム:12:40-13:40)

講演番号
16
研究タイトル
74LSシリーズIC向け電源ピン位置可変TTL ICテスタの提案
名前
新谷 華穏

概要:本研究は,TTL ICテスタの作成によるIC管理の負担の軽減を目的とする.本校情報工学科の実験で使用される74LSシリーズ等のICの動作確認は実験遂行のために必要な作業であるが実験担当者にとってはかなりの負担となっている.この負担軽減に向け,これまでにArduinoとI/Oエキスパンダを用いたICテスタが開発され,真理値表に基づく自動判定を可能としていた.しかし,既存テスタは電源ピン(VCC・GND)の位置が固定されているため14ピンICのみが対象であり,需要の高い16ピンICに対応できない.また,ICの動作判定は論理値(H/L)のみに基づいており,出力電圧などのアナログ特性を評価できないという課題がある.そこで本研究では,電源ピンを任意のピンへ動的に切り替える機能を追加し,16ピンICに対応した汎用的なICテスタを実現するとともに,ICの出力電圧などのアナログ特性を測定・評価できる機能の実装を目指す.現在は,NMOS,PMOS,およびトランスミッションゲートを用いた電源切替回路の方式選定とシミュレーションによる検証を進めている.

講演番号
21
研究タイトル
赤外線焦電センサを用いた害獣検出及び行動検知-無線通信手法の構築-
名前
田中 朝陽

概要:農業従事者が抱える深刻な問題の一つに獣害があり,被害を防ぐためには動物の種類や行動履歴を正確に把握することが重要であり,得られた行動パターンを解析することで,罠の設置場所や防護柵の最適化といった効果的な対策が可能になる.先行研究で,LoRa網に接続された赤外線焦電センサを用いて動物の行動を検出し,その結果をLTE通信経由でサーバに送信・可視化する獣害対策システムを構築している.本研究では,このシステムにおけるセンサノード側のデータ処理および無線通信手法の構築を担当する.具体的には,マイコン(Arduino)を用いて3方向の焦電センサからアナログ値を取得し,無線モジュール(IM920)を介してデータを送信する機構を開発している.現在,無線通信における電波法などの制約により,通信容量が「1パケット32バイト,一秒に3回」に制限されており,センサのサンプリングデータ量に対して送信帯域が大幅に不足する問題に直面している.今後は,限られた通信帯域の中でより正確なデータを送信するためのデータ最適化手法を確立する.具体的には,短時間にセンサ値の変化が多発した際の差分データによる圧縮送信手法の実装や,ゆっくりとした大きな変動を見落とさないための比較基準のアルゴリズム改善を行う.また,生の波形データではなくマイコン側で動物の動きの特徴量を抽出する手法を構築し,実環境での通信・評価を通じて実用的なシステムの実現を目指す.

講演番号
27
研究タイトル
映像での物体検出を用いた食材管理およびレシピ提案システムの構築
名前
中澤 郁仁

概要:近年,単身世帯や共働き世帯の増加に伴い,日々の食材管理やそれらを活用した献立考案の負担が課題となっている.現在主流となっている食材管理代行システムは,食材の登録を手動で入力するものが一般的であり,入力忘れや操作の煩雑さが残る点が問題である.そこで本研究では,この手作業の負担を無くすとともに,在庫状況に応じた日常の献立決定を支援することを目的とし,カメラとRaspberry Piを用いた自動食材管理およびレシピ提案システムの構築を行う.具体的には,冷蔵庫への食材の出し入れをカメラで撮影し,YOLOによる物体検出を用いて食材を自動認識・データベースへ登録する.さらに,その在庫情報を基に生成AI(gemini)を用いてレシピを提案し,LINE上で在庫管理からレシピ参照までを一貫して行えるシステムである.現状では,この一連の基本機能を備えた簡易システムの構築に成功した.今後は実運用に向けた開発として,一部の食材における判別精度の向上や,家族構成に応じた複数クライアントへの対応など,現状の課題を解決する拡張機能の実装を進める.最終的には,実際の冷蔵庫環境へ本システムを導入し,滞りなく自動管理ができるか実証実験を行う予定である.

講演番号
31
研究タイトル
Wi-Fi Halowを用いた校内通信ネットワーク
名前
永濱 生桐

概要:本研究では、Wi-Fi HaLowを用いた校内ネットワークを構築し、教員探索や食堂などの混雑確認に伴う移動ロスを削減するシステムを提案する。現在、校内では教員の所在確認や施設利用状況を把握するため現地へ移動する時間的ロスが生じている。教員や学生の位置情報を活用した先行システムは防犯や緊急時対応が主目的で、平常時の情報共有には十分対応していない。そこで、教員端末で取得した位置情報と定点カメラ画像をWi-Fi HaLow経由でアクセスポイントへ送信し、HTTPサーバーへ集約することで、校内各所のモニターからリアルタイムに閲覧できる環境を構築する。Wi-Fi HaLowは920MHz帯を利用し、障害物に強く約1kmの広域通信が可能で、LPWAより通信容量が大きいため画像伝送にも適する。現在は、Raspberry PiとPC間で静画像・映像データの送受信およびGPS情報の取得を実現した。一方、屋内ではGPS測位精度が低下し位置情報が不安定となるため、GPSログを解析し、受信衛星数が多い測位結果ほど信頼度を高く評価することで、測位精度の向上を図る手法を検討している。また、Duty比10%による通信制約に対し、画像・位置情報の送信時間を測定し、実現可能な更新頻度について検討する予定である。

内田研究室(コアタイム:12:40-13:40)

講演番号
01
研究タイトル
[心拍数を用いた高校野球におけるメンタル状態とパフォーマンスの分析]
名前
[芥川 光月]

概要:[本研究は,高校野球における選手の心拍数をリアルタイムに計測し,プレッシャーによる心理的ストレスがプレイ結果に及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目的とする.野球は「静と動」の切り替えが頻繁であり,メンタルがプレイに大きく影響する競技であるが,従来の指導や評価は経験や主観に依存しているという課題がある.そこで本研究では,スマートウォッチ(Xiaomi Smart Band 9 Active)を用いて練習試合中の心拍データを非侵襲かつ連続的に取得する.取得した心拍データは,試合記録(スコアブック)と時刻情報を用いて同期し,各プレイに対応する心拍データを抽出する.さらに,選手間の個人差を考慮するため,ベンチ待機時の平均心拍数で正規化した「正規化心拍数(平常時比)」を指標として用いる.さらに,平常時とプレッシャー場面(得点圏,2死満塁など)における正規化心拍数を対応のあるt検定により比較するとともに,正規化心拍数と打撃・投球結果との関連性を検証する.また,場面ごとの心拍変化を比較することで,プレッシャーに対する選手ごとの反応特性についても評価する.本研究により,プレッシャーに対する個人ごとの緊張パターンやパフォーマンス低下の特徴を可視化し,科学的根拠に基づくメンタルトレーニングや指導法の確立に貢献することを目指す.]

講演番号
04
研究タイトル
議論支援システムAIR-VASによる多様な視点提示が合意形成過程に与える影響
名前
井本 蒼士郎

概要:ワークショップなど,複数グループが同一テーマについて同時並行に議論を行う場面では,多様な意見や視点を共有しながら合意形成を行うことが重要である.そのため,グループ間で得られた意見や視点を共有し,参加者へ提示する議論支援システムが提案されている.本研究では,多様な視点を提示する議論支援システムAIR-VASに着目する.AIR-VASは,複数グループが同一テーマについて議論する環境を対象としたシステムであり,他グループで交わされた特徴的な意見や視点を参加者へ提示し,多様な価値観や新たな視点への気づきを支援する.AIR-VASに関する既存研究では,多様な価値観への気づき支援や議論活性化を目的としたシステムの有効性が検討されている.しかし,多様な視点の提示が参加者の合意形成過程にどのような影響を及ぼすかは十分に検討されていない.そこで本研究では,AIR-VASを用いる場合と用いない場合の議論実験を実施し,議論時間,発話量,発話内容,参加者アンケート等を比較・分析する.これにより,多様な視点の提示が合意形成過程に与える影響を明らかにすることを目的とする.仮説として,多様な視点の提示は新たな発想や意見の創出を促し,議論を活性化させる一方で,意見の対立や議論の複雑化を招き,合意形成時間や議論の進行に影響を及ぼすと考える.

講演番号
20
研究タイトル
経穴刺激によるVR酔いの抑制
名前
竹村 俊哉

概要:本研究は,車酔いとVR酔いが共通のメカニズム(視覚と前庭感覚の不一致)に起因するという仮説に基づき,映像などの視覚情報に干渉しない「物理的アプローチによるVR酔い軽減手法」を提案するものである.近年,VR技術の普及が進む一方で,ユーザのVR酔いが没入感や長時間の利用を阻害する大きな課題となっている.既存の対策は映像中に黒点を置く,回転映像中の視界を狭くするなど視覚的介入が主であるが,これらはVR本来の臨場感を損なう欠点がある.そこで,既に車酔いの対策として知られている首元への冷却等で酔い軽減効果が報告されている先行研究を基に,本研究では新たな物理的介入として,内関と言われる手首のツボへの圧刺激を与える酔い止めバンドに着目した.中間発表で報告する予備実験では,統計的な有意差の証明を主目的とする本実験に向けた事前段階として,以下の検証を行う.具体的には,被験者に対しエピックローラーコースター等のVRコンテンツを体験させ,SSQ(Simulator Sickness Questionnaire)による酔いの主観評価,およびIPQによる臨場感評価,実験前後のアンケートを実施する.これにより,本実験プロトコルの妥当性を確認するとともに,酔い止めバンドが臨場感を損なうことなくVR酔いを軽減できるかという有効性の予備的検証を行う.本予備実験で得られた知見を基に,今後はVR酔いを防ぎつつ臨場感をさらに高め,ユーザにより良いVR体験を提供するための本実験へと展開していく.

講演番号
23
研究タイトル
文脈類似度を用いた会話の流れの可視化
名前
塚 暖人

概要:議論において、会話がどのように遷移しているかを定量的に判断することは難しい。そのため、会話の流れや話題の変化を視覚的に把握できるように可視化することが求められる。白松らは、参照確率を用いて会話文脈を表現し、ある発話時点までの先行文脈から参照確率ベクトルを算出して、文脈類似度に基づく類似文書の検索を行う手法を提案した。本研究では、白松らの手法を応用し、会話間における参照確率の推移に着目することで、文脈類似度の変化から会話内容がどの程度合致しているかを可視化することを目的とする。ここでいう可視化とは、文脈類似度の推移を数値やグラフとして表現し、会話の噛み合い具合を直感的に把握できるようにすることである。文脈類似度は、発話内の単語の顕現性を定量化した参照確率ベクトル同士のコサイン類似度として定義し、1対1の議論においてAとBの発話の参照確率ベクトルを算出した後、それらのコサイン類似度を用いて話の噛み合い具合を可視化する。また、文脈類似度は累積的に計算されるため、数値の遷移から会話の遷移を判断する。先行研究では、発話内の単語の顕現性に基づいて文脈類似度を算出しているため、意味は同じでも異なる表現が用いられた場合に文脈類似度が低下するという課題がある。また、話題の切り替わりが考慮されていないため、それを想定した参照確率推定手法の設計も課題となっている。今後は、リアルタイムでの文脈類似度の可視化を実現するとともに、文脈類似度の遷移から話のずれを検出・提示する機能や、話の分岐時に遷移状態から今後の話題を予測する機能の実現を目指す。

講演番号
40
研究タイトル
AST差分情報に基づくプログラム作成問題の難易度評価手法
名前
森岡 珀人

プログラミング教育では,学習者の習熟度に応じた課題やテスト問題の提示が重要であるが,問題の難易度は教員の経験的判断に依存することが多く,構文構造に基づく客観的な評価手法は十分に確立されていない.本研究では,抽象構文木(AST)の差分情報に基づいてプログラム作成問題の難易度を評価する手法を提案する.提案手法では,複数の問題の解答プログラムをASTに変換し,ノードの挿入・削除・置換を基本操作とする木編集距離を用いて構造差分を算出して正解ノードで割って1で引いて類似度を算出する.また,差分ノードを可視化することで,問題間で新たに要求される構文要素やプログラム構造の違いを分析可能とする.現在,C言語のプログラム作成問題を対象とした比較可視化ツールを実装し,AST間の編集距離および差分構造の抽出を行っている.今後は,抽出した差分構造をDe-Gapperにおける学習項目抽出手法と照合し,学習者にとっての新規構文や問題難易度との関連について検討する。

上野研究室(コアタイム:10:40-11:40)

講演番号
14
研究タイトル
プログラム理解の識別における脳波の多次元DTW
名前
佐佐木 翔星

概要:プログラム理解状態を把握する手法の1つとして脳波が様々な研究で用いられている.先行研究では,脳波から算出される複数の周波数成分を特徴量として用いた機械学習により,高い識別精度が報告されている.また,時系列データの類似度を比較するDynamic Time Warping(DTW)を用いた手法では,α波のみを対象とした分析において,簡単なタスクで高い識別精度が得られている.一方で,DTWを用いて複数の周波数成分を同時に扱う多次元的な分析は十分に検討されていない.また,α波のみのDTWでは理解難易度の高いタスクで識別精度が大きく低下する問題があった.そこで本研究では,複数周波数成分を用いた多次元DTWによるプログラム理解状態の識別手法を提案し,その有効性を評価する.具体的には,各周波数成分ごとにDTW距離を算出し,それらを統合して距離行列を作成した後,階層クラスタリングにより理解・未理解状態を識別する.さらに,提案手法を従来のα波のみを用いたDTW手法と比較し,全体の識別精度およびタスク難易度別の識別精度を評価することで,多次元DTWが識別性能の向上に有効であるかを明らかにする.

講演番号
28
研究タイトル
プログラミングにおける苦手意識とゲーミフィケーションの報酬設計との関係
名前
中谷 唯人

概要:作業者の意欲を向上させる手段として,ゲームの要素をゲーム以外の分野へ応用するゲーミフィケーションが注目されている.また近年,プログラミング教育が重要視されてきているが,多くの学生が「複雑で威圧的」だと感じ,ドロップアウト率や失敗率が高い傾向にある.そこで本研究では,プログラミング学習における苦手意識と,ゲーミフィケーションの報酬による意欲の変化との関係を明らかにする.具体的には,苦手意識と作業量に対する報酬による意欲の変化との関係,および苦手意識と能力の発揮に対する報酬による意欲の変化との関係を調査する.実験では,まずProgramming Anxiety Scale(PAS)を用いて,被験者のプログラミングに対する苦手意識を測定する.次に,プログラミングタスクを,娯楽要素無しの条件,解答数に応じてトロフィーを付与する条件(作業量への報酬),正答数に応じてトロフィーを付与する条件(能力の発揮への報酬)の3条件で実施する.各条件の終了後,意欲の変化について「非常に低下した」から「非常に向上した」までの7段階でアンケートを行う.最後に,PAS得点と各報酬条件における意欲変化との関係を分析し,苦手意識に応じた効果的な報酬設計に関する知見を得ることを目指す.

講演番号
34
研究タイトル
コード修正履歴の入力情報設計がLLMによるプログラミング学習者向けフィードバック生成に与える影響の分析
名前
坂東 恵佑

概要:プログラミング授業で用いられる自動採点システムは,提出コードの正誤やエラー情報を即時に提示できる一方,誤りの原因や次に確認すべき点までは十分に示せない.提出履歴には,コードだけでなく,得点やエラーの変化,修正の過程が蓄積されており,これらを大規模言語モデル(LLM)に与えることで,学習者の状況に応じたフィードバックを生成できる可能性がある.しかし,同じ提出履歴でも,LLMへの入力形式によって重要な情報の捉えやすさや生成コストが異なると考えられる.そこで本研究では,コード修正履歴の入力形式が,LLMによるプログラミング学習者向けフィードバックの品質と生成コストに与える影響を明らかにする.具体的には,不合格となった時点までの同一の提出履歴を,最新提出のみ,コードを時系列に並べた生履歴,コード差分・得点・エラーの変化を整理した構造化履歴の3形式に変換し,同一のローカルLLMと指示を用いてフィードバックを生成する.生成結果は,課題仕様,提出コード,採点結果等と照合し,内容の正確性と学習者の次の行動につながる有用性に基づいて評価する.さらに,正確かつ有用な出力の割合に加え,入出力トークン数と生成時間を比較し,品質とコストを両立する入力形式を検討する.これにより,授業中の個別フィードバック支援に向けた提出履歴の入力設計指針を得ることを目指す.

講演番号
37
研究タイトル
プログラム理解におけるタスクごとの脳波賦活パターンと対応する脳機能の検出
名前
増井 崇

概要:プログラム理解研究において,fMRIを用いた脳活動の分析によって機能局在論に基づいた詳細な理解状況の把握が可能になると期待されている.しかし,fMRIは高価であり被験者の動作に対する制約が強く,長文のプログラム理解タスクを課すことができないなどの課題がある.一方,脳活動を計測する別の手段であるEEGは動作に対する制限が弱く,長文タスクも扱えるなどの利点がある.加えて,一部の脳活動はfMRIとEEGの双方で検出できることが示されている.本研究は,EEGで測定可能な脳領域のうち,プログラム理解に関わりがある領域を分析し,EEGデータと脳機能のマッピングとの対応の有無を明らかにすることを目的とする.被験者実験でプログラムを種類に分類するタスクを与えた時の脳波を多チャンネルEEGで記録する.分析では信号源推定を通じてタスク分類に関わる脳の賦活領域を特定する.プログラム理解時には,タスクごとに機能局在に基づく異なる脳賦活パターンが検出されるという仮説を検証する.具体的には,推定した信号源のEEGデータを分類器にかけて分類精度を評価するとともに,先行研究におけるプログラム理解に関連する領域との比較を行い,EEGデータがどの程度fMRIによる結果を網羅しているかを評価する.

講演番号
39
研究タイトル
マウスの操作ログからユーザビリティ関連感情を分析する手法の精度向上
名前
三好 哲聖

概要:アフェクティブコンピューティングとは,人の感情を機械やAIで扱う技術である.従来の音声や生理信号を用いた手法は,高精度な一方で特別な装置を要し実用性に欠けるという課題があった.これに対し先行研究では,低コストなマウス操作ログを用いた感情推定手法を提案し,外部刺激による強制的な感情誘発下で軌跡特徴量から未知ユーザのポジティブ感情を10〜20%予測できることを示した.しかし,この研究ではタスクやUI由来の自然な感情を扱っておらず,生理信号を用いるのに比べ精度が低いという問題がある.そこで本研究は,実際のWeb上でのタスクによって自然発生する,ユーザビリティ関連感情(満足・退屈・困惑・不安・ストレス)を,先行研究より高精度に推定する手法を提案し,その有効性を評価する.提案手法では,先行研究の軌跡特徴量に加えてクリック関連の操作ログを新たに導入し,速度系・軌跡系・時間系・クリック系という4つの特徴量に分類することで学習データを増やし,機械学習による回帰分析の精度向上を図る.本研究により,低コストな感情推定手法の精度向上と実際のUI操作という実用性の示唆,副産物として特徴量ごとの寄与の体系的な解明が期待される.

岡村研究室(コアタイム:10:40-11:40)

講演番号
09
研究タイトル
SLMで動作するWebアプリケーション⽤ペンテスターの開発
名前
浦久保 拓人

概要:AIエージェントによるサイバー攻撃の自動化が進む中,この技術は防御側もペネトレーションテストとして活用しうる.しかし,攻撃側はフロンティアモデルを比較的自由に利用できるのに対し,防御側はセキュリティ・コスト上の理由から小型言語モデル(SLM)しか使えないケースが想定できる.本研究では,アーキテクチャ設計の工夫により,SLMの脆弱性調査の性能をどこまで改善することができるかを検証する.既存研究として,ブラックボックスなWebアプリケーションに対するAIの攻撃性能を測定するベンチマーク,「CVE-Bench」がある.これをAIがソースコードを閲覧できる(ホワイトボックス)ように変更し,8件のCVEでベンチマークを実行した結果,攻撃成功数は0件であった.ログから失敗を分析し,無関係な話題を出力し始める「脱線」,空白の応答しか返さなくなる「沈黙」,脆弱箇所は特定できるが攻撃に変換できない「攻撃組立て失敗」,コードを読んだうえで悪用不可能などと解釈した「誤った解釈」という4種の失敗パターンを確認できた.これらは会話履歴が蓄積し,長いコンテキストを扱う場面で顕著であり,SLMの弱点を示唆する.この知見に基づき,会話履歴を蓄積せず,常に小さいコンテキストをモデル扱わせ,また,モデルの呼び出しはステートレスに行うアーキテクチャを発案した.

講演番号
11
研究タイトル
背景型敵対的攻撃に対する防御手法の検討
名前
小原 迅人

概要:近年,物体検出モデルに誤認識を引き起こす敵対的攻撃が問題となっている.従来の敵対的攻撃では,主に検出対象となる物体そのものに摂動を加える手法が研究されてきた.一方,近年では対象物ではなく背景を改変することで人物検出を妨害する背景型敵対的攻撃が提案されている.本研究では,この背景型敵対的攻撃の特徴に着目し,背景への依存性を利用した新たな防御手法を検討する.提案手法では,入力画像に対して元画像と背景のみを変換した画像を用意し,それぞれを物体検出モデルに入力する.そして,人物クラスの信頼度などの検出結果を比較し,背景変換によって検出結果が大きく変化する場合には,背景型敵対的攻撃の可能性があると判定する.さらに,攻撃が疑われる画像に対して背景のぼかし,マスク,置換などを行い,背景情報の影響を抑えた状態で再度推論することで,人物検出性能の回復を目指す.今後は背景型敵対的攻撃を再現してその特性を分析するとともに,複数の背景変換方法を比較する.その後,通常画像と攻撃画像を用いた評価実験を行い,攻撃時の検出性能を回復できるか,また通常画像の検出性能を低下させないかという観点から提案手法の有効性を評価する.

講演番号
12
研究タイトル
SNS投稿における個人特定リスクの定量的評価と可視化手法の提案
名前
日下 優人

概要:SNSでは、電話番号や住所などを明示的に公開していなくても、複数の投稿を組み合わせることで人物像が推測され、個人が特定されてしまうリスクがある。近年ではLLMが投稿文のみから年齢や居住地などの個人属性を高精度に推定できることも報告されているが、既存のプライバシー保護技術は電話番号や住所といった明示的な個人情報の検出が中心であり、複数の投稿の組み合わせによって生じるリスクへの対応は十分ではない。そこで本研究では、SNS投稿から年齢層・居住地域・趣味などの属性を推定する分類モデルを構築し、推定された属性の組み合わせに該当する人数(匿名集団サイズ)を算出することで、個人特定リスクを定量的に可視化する手法を提案する。これは、データ公開前の匿名化技術であるk-匿名性の考え方を、公開済みの投稿に対するリスク評価指標として応用したものである。本手法により、SNS利用者は自身の投稿がどの程度個人特定につながりうるかを把握できるようになり、投稿内容を見直すきっかけを得ることが期待される。

講演番号
19
研究タイトル
完全準同型暗号を用いた連合グラフ上のプライベート閉路存在証明
名前
嶽野 雄一

概要:金融犯罪検知やマネーロンダリング分析において,取引ネットワーク上の循環(閉路)は不正の重要なシグナルとなる.しかし現実には,各金融機関は直接関与する取引しか保持しておらず,単一機関がグラフ全体のトポロジーを観測することはできない.先行研究であるOryx(Ke Zhong et al., 2025)は,複数サーバによる秘密分散を用いて連合グラフ上の閉路検出を実現するが,結託しない信頼できる第三者サーバを必要とする点に限界がある.そこで本研究では,信頼できる第三者を必要とせず,データ保持者のみで秘密計算を行うことで,連合グラフ上の閉路の存在を証明するプロトコルの構築を目的とする.提案手法では,完全準同型暗号(FHE)を用い,暗号文を復号せずに,乱数によるマスキングを施した一致判定式を準同型演算により計算する.判定対象のノードが一致する場合には復号結果が0となることを利用し,隠蔽された幅優先探索を参加者間で段階的に伝播させることで,指定したエッジを含む閉路が存在するか否かという1ビットの情報のみを出力する.これにより,ノード列やグラフのトポロジーを開示せずに,閉路の有無のみを安全に判定できる.

講演番号
43
研究タイトル
Wi-Fiプローブ要求のIE構成識別と匿名化対策の評価
名前
𠮷見 武

概要:Wi-Fiプローブ要求とは,周辺のアクセスポイント探索などのために送信するパケットである。近年のMACアドレスランダム化により,プローブ要求による端末追跡は困難化した。一方で,プローブ要求に含まれるIE構成には,対応規格やベンダー情報などの機種固有情報が残存しており,端末の特定リスクにつながる可能性がある。先行研究では,IE構成やその順序のみで機種分類が可能であること,またMACアドレスやシーケンス番号の匿名化が進む一方でIE構成は十分に改善されていないことが示されている。しかし,具体的な匿名化操作によって識別性能をどこまで下げられるかは十分に検討されていない。そこで本研究では,実キャプチャデータを用いた予備調査により,同一チップセットでもOSやサプリカントの違いによってIE構成が変化することを確認し,ソフトウェア層がIE構成に強く影響することを示した。これを踏まえ,IE順序の標準化や拡張IEの削減といった匿名化対策を施したプローブ要求を実際に送信し,識別率がどの程度低下するかを評価する。これにより,IE構成に基づく識別の限界を明らかにし,どのような情報を残すと識別されやすいかを整理することで,匿名化設計の指針を示すことを目指す。

松尾研究室(コアタイム:12:40-13:40)

講演番号
08
研究タイトル
手書き文字認識における曖昧さの判定
名前
梅﨑 千紘

概要:本研究の目的は、手書き文字を認識する際に、はっきりと判定できない文字については無理に決めつけず「曖昧さ」を判定できる仕組みを検討し、採点支援システムへの応用につなげることである。背景として、教育現場では紙の試験も広く実施されており手書き文字認識を用いた採点支援システムが求められているが、認識の精度は完璧にはならず判断が難しい文字も存在する。通常の判定の仕組みは自信がない場合でも、それが本当に紛らわしいからなのか、そもそも見たことのない形だからなのかを区別できず、後者をかえって自信満々に間違えてしまうこともある。そこで本研究では、まず似た2つの手書き文字を形の特徴に応じて配置した空間の上に置き、単純に直線で結ぶのではなく不自然な変化が生まれないよう工夫しながら、その間になめらかに変化していく道筋を作る。そして判定したい文字がこの変化の中のどのあたりに近い見た目をしているかを調べることで、どちらかの文字にはっきり近いのか、それとも中間的で判断がつきにくいのかを区別する。これにより無理に決めつけた誤判定を防ぎ、採点支援システムの信頼性向上につなげる。

講演番号
15
研究タイトル
画像テクスチャ特徴量を用いたホットミクスの最適な攪拌停止タイミングの推定
名前
佐藤 清正

概要:本研究では、画像データから生地表面のテクスチャを解析し、ホットミクス攪拌工程の停止タイミングを自動かつ非接触で推定することを目的とする。食品製造の攪拌工程における停止タイミングの推定では、従来の接触式センサ(WHIP値)を用いた手法が全製品に適用できない場合がある。また、熟練技術者による目視判定には作業負荷や個人差といった課題がある。先行研究では、生地表面の変化をLocal Binary Pattern(LBP)で符号化し停止指標として用いた。その結果、攪拌の進行に伴いLBPは安定した単調減少を示したが、画像ノイズなどの影響により停止タイミングを高精度に特定できない課題があった。そこで本研究の提案手法では、LBPに代えてLocal Ternary Pattern(LTP)を停止指標として用いる。LTPは中心画素と近傍画素の輝度差を−1、0、+1の3値に符号化する特徴量であり、閾値を設けて微小な輝度変化を0として扱う。この不感帯により、ノイズや照明変動の影響を抑制できるため、攪拌停止タイミングのより高精度な推定が期待される。

講演番号
29
研究タイトル
AIを用いたホイップの攪拌停止タイミングの推定
名前
中西 結樹

概要:本研究は,企業との共同研究テーマとして,ホイップの攪拌状態をAIによって判定し,適切な攪拌停止タイミングの推定手法の提案とその検証を目的とする.現在,攪拌停止タイミングの判断は熟練作業者の経験に依存しており,状態確認のために攪拌機を停止させる必要があることから,作業効率の低下が課題となっている.従来研究では,生地表面の一部を撮影した画像からテクスチャ特徴量を用いて状態判定を行っているが,ホイップ全体の変化を十分に捉えられず,判定精度に課題があった.そこで本研究では,攪拌中のホイップ表面全体を撮影した動画を入力とし,ホイップ全体の形状や表面状態の変化を利用した状態判定を行う.まず,生地表面全体を撮影した動画を,時系列順に「攪拌中」「攪拌停止」「過攪拌」の3種類としてAIモデルを学習させる.このモデルを用いて未知の入力動画に対しても3種類の動画フレームとして認識することで3種類に分類可能かを検証する.検証結果として,AIを用いることで特徴量を抽出することなく,撹拌動画から撹拌停止タイミングの推定が行えることを期待している.

講演番号
32
研究タイトル
構造解析法による重畳採点記号の認識 —ストローク芯線上の正確な連結点検出手法の提案―
名前
中村 奏月

本研究は,複数の採点記号が交差・接触した重畳採点記号に対し,既存のパターンマッチング認識を構造解析で補完し,各記号を個別に認識することを目的とする.重畳採点記号では複数の線が一つにつながるため,画像全体の外観だけでは,各線の所属先や接続先を判断しにくい.そこで,文字パターンの芯線である骨格を抽出し,端点,線の方向,及びストローク芯線が交差・接触する連結点を構造特徴として取得する.これらを丸の閉曲線性や訂正線の平行性などと対応付け,既存の認識部を補完する.しかし,一般的な細線化では連結点付近の骨格に位置ずれや不要枝が生じ,連結点の位置や接続関係を正しく取得できない場合がある.そこで,向かい合う輪郭点の中点から中心軸を抽出し,対応が曖昧な領域では中心軸を直接生成せず,周囲の中心軸を延長することで,正確な連結点を含む骨格の生成を試みる.現在は人工的な重畳採点記号画像を用い,輪郭線,補完前の中心軸,端点とその方向,補完後の骨格を可視化し,重畳前の線構造と目視で比較している.その結果,輪郭線と非交点領域の中心軸は概ね抽出できたが,連結点付近では異なる記号の骨格が誤って接続される場合が確認された.今後は,連結点の位置と接続関係の精度を改善し,構造特徴を用いた個別認識への有効性を検証する.

講演番号
42
研究タイトル
誤認識しやすい手書き数字ペアの定量解析と実運用閾値設計
名前
山本 凌楓

概要:本研究は,手書き採点における数字認識の誤認識しやすい組合せを明らかにし,その検出に基づいて採点支援システムが自動的に注意喚起を行うための閾値設計手法を提案することを目的とする。背景として記述式試験では採点ミスが発生し,受験者・採点者双方に負担を与えているが,既存の支援システムでは手書き数字の認識精度に改善の余地がある。まず先行実験としてMNISTデータセットと畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた認識実験により混同行列解析を行い,誤認識頻度の高い数字ペア(例:5→3,4→9,8→3,9→3,2→3)を抽出した。今後は,抽出パターンを被験者に実際に筆記してもらったデータを被験者別辞書で評価する。出力確率や第1候補と第2候補の確率差を指標に,ROC曲線やF1スコアから注意喚起の最適閾値を決定し,誤警報率と見逃し率のトレードオフを検討し,実運用での有効性を検証する予定である。

松村研究室(コアタイム:12:40-13:40)

講演番号
10
研究タイトル
聴覚の左右差を緩和するアプリケーションの開発
名前
大園 悠揮

概要:個人の聴力には左右で差異が存在することが多く,標準のオーディオ出力では音像の偏りや臨場感の低下を招く場合がある.この問題は,緻密な音響定位が求められるゲームプレイだけでなく,日常的な音楽鑑賞においても体験の質に影響を与える.そこで本研究では,ユーザー個人の聴覚の左右差を測定し,適切に補正するパーソナライズEQシステム「HearingSupport」の開発を行う.本システムは,既存の仮想オーディオデバイス(VB-Cable)を用いてPCのシステム音をキャプチャし,アプリケーション内部でBiquadフィルタによるデジタル信号処理を施してヘッドセットへ出力する構成をとる.主要な機能として,左右独立した聞こえの検査により最小可聴値を測定し,左右の聴こえ方を均一化する補正EQを自動生成する機能を実装した.また,特定の環境音を解析・強調する抽出機能や,31バンドの詳細なグラフィックEQを搭載した.さらに,過去の検査記録をカレンダー形式で管理することによって聴力の変化を記録することができ,即座にその日の設定を復元できる.本システムにより,専門知識を持たないユーザーでも音楽やゲームにおいて最適な音響環境を容易に構築可能となる.

講演番号
17
研究タイトル
基本周波数変動幅の操作による関西弁イントネーションの知覚境界の分析
名前
砂川 伸紀

概要:音声言語における基本周波数(F0)は連続的に変化する物理量であるが,話者は関西弁イントネーション(京阪式アクセント)や標準語イントネーション(東京式アクセント)といった離散的なカテゴリとして知覚・分類している.分節音の知覚境界に関しては,とりわけ子音においてカテゴリ知覚が見られ易いことなどが調べられている一方で,イントネーションに基づく方言知覚の境界特性については,いまだ十分に明らかではない.既存研究により,ピッチアクセントの有無に関する知覚がカテゴリ的に行われることは示されているが,方言イントネーションの知覚が同様にカテゴリ的であるのか,あるいは連続的な知覚に基づくのかについては検討の余地が残されている.そこで本研究では,関西弁イントネーションの知覚境界に着目し,特に「関西弁イントネーションとして知覚されるために必要なF0変動幅の下限」という観点から,その知覚特性を明らかにすることを目的とする.具体的には,知覚がカテゴリ的に行われるのか,F0のHigh-Lowパターン知覚できれば関西弁と知覚するのか,またこれらの問いについて関西弁話者と非関西弁話者の間で差異があるのか,といった点について実験的に検討し,考察を行う.

講演番号
24
研究タイトル
重回帰分析による音声特徴量と概日リズムおよび季節変動との関連解析
名前
辻中 日菜

概要:人間には約24時間周期の内因性リズムである「概日リズム」が存在し,睡眠や自律神経活動などの生理現象に影響を与えている.音声は声帯や声道によって生成され,特に声帯は迷走神経に支配されていることから,自律神経活動の影響を受けると考えられる.そのため,音声特徴量にも概日リズムが反映される可能性がある.先行研究では,音声特徴量と概日リズムの関連について検討し,音声特徴量が概日リズムの影響を受ける可能性が示された.しかし,測定時期は10月のみで実施されており,季節による違いについては十分に検討されていない.そこで本研究では,7月,10月,12月,3月の各季節において,1日4回(朝・昼・夕・夜)の音声測定を実施し,音声特徴量,血圧,脈拍,唾液アミラーゼ活性,アンケート結果を収集する.収集したデータを重回帰分析により解析し,音声特徴量と概日リズムの関係に対する季節の影響を明らかにするとともに,一部被験者については継続測定による経時的変化についても検討する.

講演番号
33
研究タイトル
非リズムゲームにおけるBGMとゲーム内要素の連動がプレイ体験に与える影響
名前
西陰地 厚志

ゲーム性に音楽やリズムが関わらないゲームにおいて、ゲーム内要素とBGMの連動はインタラクティブミュージックといったゲーム展開に合わせてBGMを連動させるものが大半であり、ゲーム側の要素をBGMに連動させる試みは少ない。そこで、本研究ではリズムゲーム以外のジャンルにおけるBGMをゲーム内要素に干渉させることによるプレイ体験の向上についての実験を行う。本研究ではBGMとゲームを連動させる手法としてBGMのMIDIデータから任意の音楽的特徴を検出し、任意のゲーム内要素に置換する方法を採る。実験では共通のゲームシステム上で一部要素をBGMから生成したver1と手動で全ての要素を設定したver2を用意して被験者に2者をランダムな順で連続してプレイさせた後、プレイ体験に関するいくつかの項目を順序尺度で評価するアンケートに回答させることでプレイ体験の変化を検証する。実験で使用するゲームについてはゲームジャンルはスクロールアクションのようにプレイ時間が固定されるジャンル、プレイ時間はBGMとともに30秒~60秒固定を予定しており、MIDIデータから音楽的特徴を検出するツールとともにUnityで実装する。今後の計画としては8月以降に実験に用いるゲームシステム及びBGMを制作、10月以降に実験準備・実施を予定している。

講演番号
35
研究タイトル
ゲーム音響がプレイヤーと視聴者の体験に与える影響
名前
福田 悠人

概要:ゲーム音響は従来、操作主体であるプレイヤーに対して没入感や感情を高めるものとして設計・評価されてきた。一方、近年はゲーム配信やeスポーツ中継の普及により、ゲームを操作するプレイヤーだけでなく、映像と音響を受容する視聴者もゲームコンテンツの主要な受け手となっている。このとき、プレイヤーに有効な音響設計と、視聴者に有効な音響設計が一致するとは限らない。そこで本研究では、スコア・戦略型ゲーム及びストーリーゲームを対象に、固定音響、ゲーム状態に応じて変化する適応音響、立体音響・定位表現、キャラクターの読み上げ形態の違いが、プレイヤーと視聴者の体験に及ぼす影響を比較する。読み上げについてはローカル環境で動作する日本語音声合成AI「Irodori-TTS」を活用して、無音、電子音に加えて擬似的な部分音声、全文音声についても検証する。プレイヤーは没入感、楽しさ、認知負荷、課題成績を、視聴者は没入感、展開理解、感情喚起、視聴継続意図を評価する。最終的には、操作支援と視聴演出の役割を整理し、制作規模の限られるインディーゲームにも導入可能な、プレイヤーと視聴者それぞれに適した音響設計指針を示すことを目指す。

山口賢研究室(コアタイム:12:40-13:40)

講演番号
07
研究タイトル
テストポイント挿入を用いた テスト容易なMUTEXの設計
名前
宇野 志保

概要:本研究では、非同期式回路の主要な構成要素である排他制御素子(MUTEX)のテスト容易化設計を目的とする。MUTEXは動作が入力遷移の順序や前状態に依存するためテストが困難であり、先行研究ではテスト回路を付加する手法が提案されていた。しかし、特定の故障をテストする際、故障の励起条件と出力の観測条件が衝突する「デッドロック問題」が存在し、すべての故障を検出できないという課題があった。そこで本研究ではデッドロック問題を根本的に解消するため、MUTEX内のフィードバック経路上に適切なテストポイントを挿入し、テストモード時に信号経路を能動的に切り替えるテスト容易化設計法を提案する。本手法により、テスト時にループを遮断しつつ外部からテスト信号をダイレクトに注入可能とすることで条件の衝突を回避する。現在の進捗として、このデッドロックを解消するためのテストポイント挿入に関する設計方針を確立した段階である。今後は、通常動作時のスピードを落とさずテスト信号を確実に注入できる具体的なトランジスタレベルの回路設計を行う。そのうえで回路シミュレータHSPICEを用いた検証環境を構築し、論理シミュレーションによる基本動作の確認、および模擬故障を用いた故障シミュレーションを行うことで、遅延への影響評価と故障検出率の向上を波形解析により実証することを目指す。

講演番号
13
研究タイトル
軽音楽部の音漏れ可視化と騒音低減手法の提案
名前
小原 浩太

概要:本研究では、無線通信を用いた騒音監視システムを構築し、軽音楽部の音漏れを定量的に評価するとともに、データに基づく自主的な騒音管理手法を提案する。軽音楽部の部室では日常的に楽器演奏が行われており、隣接する他の部活動への音漏れが懸念されている。しかし現在は主観的な評価に依存しており、客観的な騒音状況を把握できていない。また、市販機器では即座に騒音状況を把握することが難しい。そこで本研究では、演奏中の部員が即座に騒音状況を認知できるよう、LEDを用いた視覚的リアルタイムフィードバック機構を備えたIoT型騒音監視システムを構築する。具体的には、部室外の音センサによって騒音レベルを計測し、無線通信を介して部室内へデータを送信し、閾値超過時にはLEDを点灯させることで、演奏者へ自発的な消音行動を促す仕組みの実現を目指す。さらに、取得したデータから、時間帯や演奏条件による音漏れ傾向を明らかにし、騒音低減につながる運用指針の検討を行う。現在までに、Raspberry Pi 3、TWELITE機器、音センサを用いた測定環境を構築し、センサ値の無線送受信を確認している。一方で、取得データの可読化および保存機能については現在開発を進めている。今後は、記録機能と通知機能を追加し、部室の利用状況や演奏条件による音漏れ傾向の分析によって、音漏れを定量的に評価し、周囲への影響低減に資する手法の提案を目指す。

講演番号
18
研究タイトル
高糖度ミニトマト向け灌水制御システム-データ収集ハードウェアの開発-
名前
髙岡 更沙

概要:ミニトマトは適度な水ストレスを与えることで糖度が向上するが、過度な水ストレスは生育不良や枯死を招く。従来の灌水管理は、生産者が葉の色や萎れ具合、土壌の状態などを総合的に観察しながら判断することが多く、熟練者の経験や勘に大きく依存している。また、栽培中に糖度を直接評価することは困難である。先行研究では植物状態指標を用いた水ストレスの推定が可能であることが報告されている。そこで、植物の水ストレス状態をAIで推定し、適度な水ストレスを維持することで糖度向上を図る高糖度ミニトマト向け自動灌水システムを共同で開発する。本研究では、そのシステムの実現に必要な長期間安定してデータ取得・制御できるハードウェアを開発する。本システムでは、VPD、葉気温差、クロロフィル指数、重量変化量、葉の萎れ具合をAIに入力してストレス状態を推定し、その結果に基づいてDCポンプを制御する。また、防塵・防水筐体の採用、RTOSによるタスク分離、耐障害設計を取り入れることで、過酷な栽培環境において安定したデータ取得と灌水制御を実現する。現在はシステムの構築を進めており、DCポンプの制御および温湿度センサ、赤外線温度センサ、分光センサの基本動作を確認した。今後は構築したシステムを用いてミニトマトを栽培し、長期運用時の安定動作、データ取得の継続性、および耐障害性を評価する。

講演番号
30
研究タイトル
RISC-Vベースのautoencoder向けISA拡張とその評価
名前
中野 劉建

概要:製造装置のセンサのリアルタイム監視・異常検知にエッジAIを用いる手法が近年注目されている.エッジAIは端末上でデータの推論を完結させることで,従来のクラウドAIで発生していた通信遅延やプライバシーの問題を解決している.そのため,観測対象機器に組み込まれるエッジデバイスには電力・面積・コストの点で制約が大きく,AIアクセラレータ搭載のプロセッサのエッジデバイスへの適用は困難である.この制約に適応する一つの手法として,CPUの命令を拡張し,外部アクセラレータに依存しない形で計算を行う方法がある.先行研究では,汎用デジタル信号処理,特に畳み込みを想定したISA拡張が行われており,ニューラルネットワークで構成されるエッジAIに対して適していない.異常検知には正常データのみの教師なし学習が必要であるため,本研究ではそれが可能なautoencoderに着目し,ISA拡張とプロセッサコアの設計・実装を行う.FPGA上での実機評価では,推論レイテンシ・電力効率・リソース使用率を計測し,既存コアと定量比較することで提案手法の優位性を示す.現在はRV32IプロセッサをVerilogで実装済みであり,次ステップとして,先行研究(PULP Architecture)の更なる調査とautoencoderの設計方針を検討する.

講演番号
44
研究タイトル
高糖度ミニトマト向け灌水制御システム―植物状態評価アルゴリズムの開発―
名前
和井田 朋香

概要:高糖度ミニトマトは高い付加価値を持つ一方、糖度は水分ストレスの与え方に大きく左右される。適度な水ストレスは糖度を高めるが、過度なストレスは生育不良や枯死を招くため、栽培者は葉の萎れ、土の乾き、生育状況など複数の情報を経験的に総合判断して灌水を行っており、栽培初心者が同様の管理を再現することは容易ではない。市販の自動灌水システムはタイマー制御や土壌水分量を基準とするものが多く、植物の状態を総合的に評価した灌水制御は十分ではない。そこで本研究では、葉の萎れ、CI、葉温差、VPD、重量変化率といった複数のセンサ由来の指標を統合し、植物の状態を評価するAIアルゴリズムを提案する。植物状態評価値をPID制御へ入力し、高糖度栽培に適した水ストレス状態を維持するよう灌水量を自動で調整する。さらに、灌水後に得られる植物の反応をフィードバックとして活用し、評価モデルを適応的に更新する手法についても検討する。現在は、各センサを用いた植物状態の計測環境を構築するとともに、アルゴリズムの基本設計およびシミュレーション評価を進めている。今後は、構築したモデルを実際の灌水システムに組み込み、目標とする植物状態への追従性を主たる指標とするとともに、収穫した果実の糖度もあわせて計測し、本手法の有効性を検証する。これにより、熟練者の経験に依存しない、高糖度ミニトマト栽培に適した自動灌水制御手法の実現を目指す。

山口智研究室(コアタイム:10:40-11:40)

講演番号
05
研究タイトル
人間の介入度合いから考えるAIと人との協働の検討
名前
内田 匠海

概要:本研究の目的は,AIの出力における新規性を人の関わり方から検証し,AIと人との協働について検討することである.ユーザがAIをどう使用すれば高い新規性を得られるか,また学生の卒研に関するタスクについて教員はどう指導すべきかを探求する.既存手法として,AIツールが開発者の生産性に与える影響や,LLMを用いた文章作成が人間の学習や記憶に及ぼす影響などが調査されている.しかしながら,LLMの利用により,文章の定型化や,独創性や主体性が低下する可能性がある事が問題点として挙げられている.また,AIに新規性のある出力をさせるには,コンテキストを正確に伝えることや,明確な要件定義をする必要があることも指摘されている.この問題を解決するために,本研究では,ユーザが設計した上で外注させると,丸投げより新規性が高くなるという仮説と,教員が設計して研究させると,学生の研究力は高まるという2つの仮説を立てる.次に,仮説を検証するための方法について述べる.卒研に関するタスクを「AIに丸投げ」「AIに作らせ人間が取捨選択」「人が設計してAIに外注」の3条件で実施し,それぞれの成果物の新規性の割合を評価する.

講演番号
22
研究タイトル
ユーザの未知領域におけるAI生徒法の効果に関する研究
名前
田中 温大

概要:本研究の目的は, 初心者を対象としたAI生徒法の有効性を検証することである. AI生徒法とは, 生成AIの出力に対して利用者が所望の出力になるまでダメ出しや修正指示を繰り返す利用手法である.関連研究として, 誤りを含むAI生徒を用いた学習支援に関する研究や, 生成AIがソフトウェア開発における生産性へ与える影響を調査した研究がある. しかし, 前者では学習効果が確認された被験者は全体の約1割にとどまり, 初心者に対する有効性は十分に示されていない. また, 後者では主観的評価と客観的評価との間に乖離がみられたものの, その要因について十分な分析が行われていない. そこで本研究では, 解決のアイデアとして「理解できるまでAIと壁打ちを行う」という実験タスクを設定し, 初心者におけるAI生徒法の効果を検証する. AI生徒法条件では, 被験者が正解を把握した状態で生成AIに対してダメ出しを繰り返し, AIが正解に到達するまで壁打ちを行う. 一方, 対照条件である通常の壁打ちでは, 被験者は正解を知らない状態で生成AIとの対話を行う.両条件を比較し, 生産性, やる気, 理解度の変化を評価する. 生産性は課題完了時間, やる気は実験時間と体感時間の差, 理解度は事後テストの正答率によって測定する. また, 対話ログからプロンプトの質を分析し, AIとの対話過程との関係についても検討する.

講演番号
26
研究タイトル
ゲーム実況の解説に基づく生成AI利用時の上達条件の解明
名前
中井 修一

概要:本研究の目的は生成AIによる代理経験のみで上達する方法を探すことである.既存手法として,生成AI利用時のユーザのスキルに関する研究がある.これは,LLM使用,検索エンジン使用,ツール不使用の3グループで比較した研究である.その結果,LLM使用グループは他と比べて,自分の文章を正確に引用できなかった.しかしながら,この研究にはLLMの使用方法に関する条件がないという問題点がある.さらに,生成AI利用時のユーザの上達に関する研究は少ない.この問題を解決するアイデアは理解のモデルを与えることである.本研究では,見るだけの代理経験では暗記学習の範囲で上達するという仮説と,理解のモデルを与えることで観察者がゲーム実況を理解できるようになるという仮説と,理解のモデルを使うことで代理経験で得られなかった経験が補えるという3つの仮説を立てた.このアイデアを検証するタスクとして,評価の指標があるゲームを用いる.ゲームプレイとゲーム実況観察での上達を比較することで,見るだけの代理経験の仮説を検証する.次に,理解のモデルを用いてゲーム要素の説明を紙に書かせる人と,見るだけの人の2つのグループで,理解のモデルの仮説を検証する.ここでは気づきやすい空白地帯があるかを調べることで,観察者が理解できるようになったかを調べる.

講演番号
36
研究タイトル
AIの使い方における思考のコストと記憶の定着に関する研究
名前
前田 貴亮

概要:本研究の目的は,AIを用いた効率的なスキルアップの可能性を検証することである.問いは2つあり,AI代行より自分の思考を優先する条件は何か,AIの使い方によって記憶の定着がどのように変わるのかである.中間研究では後者の問いを検討する.既存研究として,LLM使用群・検索エンジン使用群・ツール非使用群の3グループに分けて小論文執筆時の脳活動の度合いを比較した研究がある.その結果,AI使用時には脳活動が弱く,本人の書いた内容の引用できない率が大きいことが分かった.しかしながら,この研究の問題点としてAIの使い方を分類していない点が挙げられる.思考コストや記憶定着への影響が変わる可能性が十分に検討されていない.この問題を解決するために,仮説としてAIの使い方によって記憶の定着は変わると考えた.解決のアイデアとして丸投げ・作業の方法を教わる・自分で方法を考えてAIがそれを評価する,という3段階で思考コストを操作し,その違いを検証することとした.提案手法として,参加者全員が同一の作業に対してそれぞれの方法でAIを使用した後,使い方によって作業内容や短期・長期記憶の定着度がどのように異なるかを比較・評価する.

講演番号
45
研究タイトル
AI依存からの回復条件とAIの適切な利用方法
名前
渡邉 紗也乃

概要:本研究の目的は,AIへ思考を丸投げする状態(認知的降伏)からの回復条件を明らかにし,AIの適切な利用方法を示すとともに,AI側の工夫とユーザに回答責任を負わせることが認知的降伏に与える影響を検証することである.既存研究では,AI出力を批判的に評価する教育活動により,認知的降伏が低減し,批判的思考力が向上することが報告されている.一方で,この研究では,AI出力への介入による回復効果は十分に検証されておらず,重度の認知的降伏に陥った利用者には,AIへの丸投げを防ぐ仕組みも必要である。また,利用者への介入はメタ認知的振り返りが中心であり,行動指標や効果の持続性の評価が不十分である.この問題の解決のアイデアとして,AIを利用可能な環境で被験者に課題を解かせ,AI出力(応答遅延・正確性の操作・冗長な回答)や,回答の責任を意識させる条件を操作する.具体的には,AI出力を不親切にすることが一時的に認知的降伏を低減するか,またユーザに回答責任を負わせる介入が回復効果を持続させるかを検証するため,ファクトチェック率,編集量,プロンプト工夫の自発率を測定し,介入直後と一定期間後の行動変化を評価する.

無所属(提出されたファイルに不具合がある学生)