科研費成果報告用ページ(2022年度版)


令和2年度状況
種別 テーマ名 補助金額
基盤研究C 自由手書きされた重ね書き文字認識を可能する前処理の実現 650,000(内間接経費150,000)

研究実績の概要
令和3年度は,研究計画として,1.重畳文字分離手法の提案,2.提案手法の有効性検証,3.重畳文字分離部の開発,4.重畳文字分離部開発に関する研究報告,に関する研究の推進並びに報告等を予定していた.
1.については,採点済み答案画像に対する色分布の分析を実施し,答案の背景領域である答案用紙と印刷文字領域と用紙採点記号の筆跡領域が重畳する領域の色情報について分析調査した.その結果,両者の領域の色クラスタを良好に線形分離できていなかったことで,採点記号の重畳領域でのストローク欠損が生じていることが明らかとなった.特に,分析結果からこの無彩色で明度が低い答案内の背景領域における色クラスタの分布の広がりが主な原因であるが判明した.そこで,この背景領域色クラスタの分布の広がりを抑制するために,採点領域抽出の前処理として,答案採点記号にNLM(ノンローカルミーン)フィルタを用いたフィルタリング処理を施す処理を提案した.
2.については,提案手法による予備実験の結果から背景領域内の色クラスタの分布の広がりを抑制する効果があることが明らかとなった.これにより,以後の採点記号抽出処理で得られる採点記号パターンの欠損発生を低減できる可能性について明らかにした.
3.については,完成を目指している採点ミス発見支援システムの汎化能力を向上させる一環として,
システム内の重畳文字分離部の開発において筆記具によって採点記号パターンの抽出精度への影響について調査を開始している.
現状として,筆記具の変化によって色クラスタの分布や重畳領域の色クラスタの性質が変化することが確認できており,
この変化に対する分離精度の影響については引き続き検証が必要である.
4.については,コロナの影響で発表機会がなかった令和2年度と今年度の成果を2つにおいてオンライン発表を実施した.


令和4年度の研究計画である採点ミス発見支援システムの高精度化の実現に向けて,重要な処理部となる重畳文字分離部の性能向上のために,答案画像の色情報の分析に研究時間を費やしており,そこに加えコロナ渦による研究設備場所の使用制限の影響もあり,当初の計画が少し遅れ気味となっている.
今年度からコロナ渦の影響もなくなり,研究時間の確保が容易になってきており,研究計画を定常に近づけている予定である.
今年度が本研究テーマの最終年度となるため,早急に分析調査で得られた筆記具の影響を考慮した色クラスタの性質を考慮した重畳文字分離部の開発を実現し,その分離部を導入した採点ミス発見支援システムが高精度化したかの確認を実施していく.
さらに,途中の研究成果においては,今年度秋と来年度の春の学会にて成果発表を実施する予定である.



今後は,令和3年度の研究テーマであった重畳文字分離部の開発を早急に推し進め,令和4年度の研究計画に沿ってい,開発したルーチンを現状の採点ミス発見支援システムの処理に組み込んで,本システムの高精度化が図れたかを明らかにしていく.
令和3年では,コロナ渦の影響で実験協力者の募集と実験依頼,ならびに,長時間での実験設備の使用が困難であったことから,実験データの作成および実験サンプルの収集を実施することもできなかったので,これについても早急に実施していく必要がある.

助成による研究成果一覧


〒639-1080 大和郡山市矢田町22
奈良工業高等専門学校 情報工学科 
教授  松尾 賢一
E-mail:matsuo□info.nara-k.ac.jp
(巡回ロボット対策のため,□を@に変えています)